最近はプログラミングを手助けしてくれるAIコード補助ツールが増えてきました。コードを書くときに自動で補完してくれたり、質問に答えてくれたりするので、初心者にとっても強力な味方です。代表的なものにGitHub Copilotがありますが、実は私は最近、新しく登場したCursorというツールに乗り換えました。この記事では、なぜCopilotからCursorに乗り換えたのか、初心者にも分かりやすく説明してみたいと思います。
比較: GitHub CopilotとCursorの機能の違い
まずはGitHub CopilotとCursor、それぞれが何をしてくれるツールなのか簡単に整理してみましょう。
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GitHub Copilot: マイクロソフト傘下のGitHubが提供するAIペアプログラマーです。Visual Studio Codeなどのエディタに拡張機能として組み込み、コードを入力していると次に書くべき内容を提案してくれます。例えば関数の署名を書くだけで、中身の実装をまるごとグレイの字で予測表示してくれたり(Tabキーで確定できます)、コメントに「// ○○を実装する」と書けばそれに沿ったコードを生成してくれたりします。
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Cursor: 一方のCursorは、VS Codeをベースにした独立したコードエディタです。VS Codeと見た目や使い勝手はほとんど同じですが、はじめから高度なAIアシスタント機能が統合されています。Cursor上ではチャットで質問できたり、エディタ内で直接AIに指示を出してコードを書き換えてもらえたりと、「VS CodeにAIの超能力を足したようなもの」だと言えます。
では、具体的に機能面の違いをいくつか見てみましょう。
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コード補完のスタイル: Copilotは基本的にインライン補完が得意です。コードを入力中に次の一行や関数全体の候補を出してくれます。提案はかなり賢く包括的な場合もありますが、状況によっては文脈と合わないコードが出てくることもあります。
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チャット機能: Copilotにもプレビュー機能でCopilot Chatがあり、コードエディタ内で質問したり説明を求めたりできます。ただしCopilot Chatは別途有効化が必要で、使えるエディタも限定されています。Cursorでは画面右側にチャットパネルが常にあり、コードの解説を聞いたり「このバグを直すには?」などと質問できます。チャットは常に現在のファイル内容や選択したコードを参照できるので、手元のコードに即した回答を得られます。たとえば「この関数は何をしているの?」と聞けば、該当コードを読んだ上で噛み砕いた説明を返してくれます。
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プロジェクト全体の理解度: Copilotは基本的に今開いているファイルや直近の編集内容をもとにコードを提案します。そのため、小規模な補完には優れていますが、大きなプロジェクト全体の文脈を理解させるのは苦手です。「Copilotは大規模コードベースの文脈把握が弱い」という指摘もあるほどです 。一方Cursorはコードベースのインデックス化という仕組みで、プロジェクト全体をあらかじめ読み込んで覚えています。そのおかげで「プロジェクト全体を検索して○○という機能を見つけて」といった問いかけにも対応できます。実際、Cursorでは
@Codebase
コマンドを使って「〇〇する関数はどこにある?」と質問すると、全ファイルを検索して該当箇所を示してくれます。これにより、開いていないファイルの内容でもAIが把握して回答できるのです。 -
エディタへの統合度: Copilotは普段使っているエディタ(VS CodeやJetBrains製IDE等)の拡張として動作するので、環境を大きく変えずに導入できる利点があります。Cursorは専用エディタなので、VS Codeユーザであれば乗り換えも容易ですが、たとえば普段JetBrainsを使っている人はまずエディタをCursorに変える必要があります。ただ、CursorはVS Codeベースで拡張機能もそのまま使えるため、切り替えてしまえば普段の開発プラスAIの利便性を享受できます。
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複数ファイルへの対応: コードを書いていて「ある機能をまるごと追加・変更したい」という場面では、Copilotは基本的にファイルごとに提案してくれます。一方CursorにはComposerと呼ばれるモードがあり、プロジェクト全体に跨るコード生成や一括編集が可能です。選択した複数のファイルを一度に編集したり、新しいファイルを自動生成させることもできます。Copilotにはこのように複数ファイルにまたがる自動編集機能は今のところ存在せず、同等の機能はありません(※2024年時点)。例えば「この機能に必要なモデル、コントローラ、ビューをそれぞれ作って」と頼むと、Cursorなら3つのファイルを順次作成して実装してくれるイメージです。Copilotの場合、ファイルを自分で作成して一つひとつにコメントを書くなどして誘導する必要があります。
以上のように、Copilotは 「今打っている場所での賢い入力補完」 に強みがあり、Cursorは 「プロジェクト全体を見通した高度な編集・生成」 が得意という違いがあります。それでは、私が実際にCursorへ乗り換える決め手となったポイントについて具体的に紹介します。
乗り換えの経緯: なぜCursorを選んだのか?
Copilotも便利なツールでしたが、私がCursorに魅力を感じた大きな理由は、なんといっても**「Agent機能」**の存在です。このAgent機能がどんなものか、一言で表すと「AIに一連の作業をお任せできるモード」です。
従来、Copilotを使っているときは「コードを書いて提案をもらい、うまくいかなければ自分で修正し…」と人間が主導でAI補助を活用する形でした。特に複数ファイルにまたがる変更や、コードを書いた後のテスト・デバッグは自分で行う必要があります。これに対してCursorのAgentモードでは、ある程度AIが主導で作業を進めてくれるのです。
例えば、私が「この新機能をプロジェクトに追加して」とAgentに指示したとします。するとCursorはまず自分でどのファイルを編集すべきか計画を立て、必要なら新しいファイルを作り、関連するコードを書き始めます。場合によってはターミナルコマンドを実行してテストを走らせたり、エラーが出れば自分で修正を試みたりしてくれます。まさに新人のプログラマに「じゃあここを実装しといて」と頼んで、一通りやってもらっているような感覚です(もちろん完全に放置ではなく、途中経過を見ながら必要に応じて調整はしますが)。
Agent機能がすごいのは、裏でいくつものツールを駆使している点です。コードの読み書きはもちろん、プロジェクト内の検索、場合によってはウェブ検索まで自動で行って最新の情報を参照しながらタスクを進めます。開発中にドキュメントをググるようなこともAIが代行してくれるイメージです。またターミナルでのコマンド実行も可能で、例えば「テストを実行して」と頼めば実際にプロジェクト内でnpm test
を走らせ、その結果を見て次の行動を決める、ということまでやってのけます。Copilotにはこのような自律的にコマンドを走らせたりウェブ検索したりする機能はありません。ここが両者の大きな差であり、私が感じたCursorの生産性ブーストの正体でした。
実際にCursorを使い始めてみて驚いたのは、「AIに任せる範囲」を自分で調節できることです。簡単な質問をしたいときは通常のChatモードで十分ですが、がっつり実装を手伝ってほしいときはComposer/Agentモードに切り替えて「まずこれをやって、それからあれもお願い」と投げかければ、あとはかなり自律的に動いてくれます。Agentは複数ステップにわたる作業も理由を考えながら連続実行できるよう設計されており、必要に応じて関連情報を自分で探してきてくれるためとても頼もしいです。
もちろん魔法のように完璧というわけではなく、時には意図と違うコードを書いてしまったり、「あれ、そこはうまくできないのか」と感じる場面もあります。それでも、少なくとも私にとってはCopilot単体で作業するよりはるかに開発のスピードと効率が上がりました。特にプロジェクト全体のリファクタリングや、大きめの機能追加のような人間だと面倒に感じる作業を任せられる点が気に入っています。
なお、乗り換えにあたってもう一つ嬉しかったのは利用コストの面です。Copilotは基本有料(月額課金、学生は無料プランあり)ですが、Cursorは一定の範囲であれば無料プランでも使い始めることができます。私もまず無料で試してみて、「これは便利だ!」と感じてから有料プランに移行しました。初心者の方でもまずは無料で触ってみて、自分に合うか試せるのは良いポイントだと思います。
結論: どんな人にCursorがおすすめ?
最後に、GitHub CopilotとCursorそれぞれどんな人に向いているかをまとめます。
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GitHub Copilot向き: 「今のエディタ環境を変えずに、手軽にAI補助を得たい人」や「主に補完や簡単な質問回答ができれば十分」という人に向いています。Copilotはセットアップも比較的簡単で、コードを書き始めれば自然に提案が出てくるので、初心者でも違和感なく使い始められます。ちょっとしたコードスニペット作成や、書き方に迷った時のヒントを得る用途にはピッタリでしょう。
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Cursor向き: *「プロジェクト全体を通した大きな開発タスクをAIに手伝ってほしい人」や「AIにある程度お任せして効率化を図りたい人」*におすすめです。特に、複数のファイルにわたる機能追加やリファクタリング、テストの自動実行まで含めてサポートしてほしい場合は、CursorのAgent機能が強い味方になります。
私自身、最初はCopilotで十分かなと思っていましたが、Cursorを試してみてその開発スタイルの変化に驚きました。AIが相棒からさらに一歩進んで、まるで助手や代理のエンジニアのように感じられる体験です。もちろんツールの好みや相性は人それぞれですが、「もっとAIにできることは任せて、自分はクリエイティブな部分に注力したい」と考える方は、一度Cursorを触ってみてはいかがでしょうか。きっと新しいコーディングの世界が開けるはずです。