こんにちは。
前回に引き続き、Plaudの議事録から「自分の脳内Wiki」を作ったプロジェクトの話です。
前回(Plaudの議事録から「自分の脳内Wiki」を作って、MCPでClaudeに繋いだ話)は、週末に一気に作り上げた「開発記」でした。設計してパイプラインを組んで、Claudeから自分の議事録を引けるようにするところまで。そして記事の最後を「品質はまだ発展途上、改善が進んだらまた追記していきます」で締めていました。
あれから3週間ほど、これを実運用に混ぜて回してきました。今回はその「その後」の話です。作った直後には見えていなかった、しばらく使ってみて初めて分かったことを正直に書きます。
しばらく回して分かったこと:「何もしなくても溜まる」が効く
まず一番の実感から。結論はこれです。
作った直後よりも、放っておいてからが本番だった。
このツールは、Plaudに溜まった議事録を毎日GCP側へ自動同期する作りになっています。なので、わたしが何もしなくても、会議をすればその議事録が勝手に取り込まれ、Wikiに反映されていく。
作った当日は「よし動いた!」で満足しがちなんですが、価値が出るのはそのあと放置している間でした。気づけば議事録が増えていて、Claudeに「あの件どうなってたっけ」と聞けば、自分が忘れていた文脈が出典付きで返ってくる。手を動かしていないのに資産が積み上がっている、この感覚が想像以上に良かったです。
Web UIを足した:ブラウザで自分の脳内を眺める
前回はインターフェースがMCP(=Claude経由)だけでした。これはこれで便利なんですが、「Wikiの全体像をざっと眺めたい」「今どんなページができているんだろう」と思ったときに、一覧で見られる場所が欲しくなりました。
そこで、閲覧用の Web UI を足しました。作ったのは次のあたりです。
- Wiki一覧:生成された人物・案件・決定・トピック・会議シリーズのページを種別で一覧
- Wikiページ本文:
[[wikilink]]でページ間を辿れて、各記述に出典(どの会議由来か)が付いている - 意味検索:「あの件」を自然文で検索
- 議事録閲覧:要約と文字起こし全文(話者ラベル・タイムスタンプ付き)
- タスク一覧:議事録から拾ったアクションアイテムの完了トグル
![Wikiページ本文。ページ間を [[wikilink]] で辿れて、各記述に出典が付く](/assets/posts/plaud-llm-wiki-in-production/wiki-page.webp)
技術的には、SSR(サーバー側でMarkdownをHTML化して [[wikilink]] をリンクにする)+ ごく軽いJSという構成で、閲覧が主体のWikiにSPAは過剰と判断して最小構成にしました。認証は自前で持たず、Cloud Run + IAP に寄せて、アクセスできるのは自分だけ。議事録は業務の機密を含むので、ここは固く倒しています。



Claudeから引く(MCP)/ブラウザで眺める(Web UI)の両方が揃って、ようやく「自分の外部脳」として日常的に触れる感触が出てきました。
実際いくらかかったか(見込みと違った話)
前回の記事では、ランニングコストを「月$5〜15くらいの見込み」とかなりざっくり書いていました。実運用してみた実績を、正直に共有します。
- デイリーのコスト:だいたい ¥300〜500。会議がなかった日は ¥0。
- 初回のリリース作業(全議事録からWikiを一括生成したとき)だけ、¥4,000ほどまとまってかかりました。
支配項は前回書いたとおりLLM費用(抽出+マージ)で、会議した日はそのぶん課金される、というのが実態です。稼働日ベースで積むと、当初の「月$5〜15」の見込みより上振れします。とはいえ日々のコーヒー1杯ぶんくらいで、忘れていた文脈が出典付きで戻ってくるなら、個人的には全然許容範囲。ただ「思ったより安い」ではなく「思ったよりはかかる」が正直なところなので、そこは補正しておきます。(これも実績とはいえ、まだサンプルが3週間ぶんなので、ざっくりです)
残った宿題:名寄せと話者特定
前回「宿題が山積み」と書いた品質の話。実運用してみて、ここが一番の伸びしろだと改めて感じています。
いまの名寄せは、aliases.yaml という 人手のメンテ層で吸収しています。文字起こしで「足立」になってしまう自分の名字(正しくは「安達」)を、正準タイトルと別名の対応表で上書きする、というやつです。
pages:
# 本人。文字起こしで「足立」と表記されるが正しくは「安達」
person-adachi-san:
title: 安達さん
aliases: [足立さん, 足立氏, 足立]
これはこれで効くのですが、毎回ファイルを手で直すのは、正直しんどい。表記揺れや、まだ紐づいていない話者を見つけるたびにYAMLを開くのは、運用としてスケールしません。
そこで次の一手として考えているのが、この名寄せや話者の指定を Web UI 上からできるようにすることです。Wikiを眺めていて「あ、この話者は◯◯さんだ」と気づいたその場で、ブラウザから指定して直せる。そうやって人間の補正を溜めていければ、Wikiの精度はもっと上げていけるはずだと思っています。
念のため補足しておくと、このWeb UIからの名寄せ編集は、まだ構想段階で実装していません。現状はあくまで
aliases.yamlの手編集です。できたら、またこの続きに書きます。
話者ラベル(話者2 のようなページがゴミとして量産される問題)も含めて、このへんは引き続き宿題です。品質はまだまだこれからです。
展望:この蓄積から「自分をトレースしたAI」を作れないか
最後に、実運用しながらワクワクしている話を。
議事録が毎日溜まって、それが人物・案件・決定として構造化されて積み上がっていく。これを眺めていて思うのは、この蓄積そのものが「わたしが何を考え、何を知り、何を決めてきたか」の記録になっているということです。
だとしたら、この積み上がった文脈を土台にして、自分の思考や持っている情報をトレースしたAIが作れるんじゃないか。「あの件、自分だったらどう判断する?」に、過去の自分の決定を根拠にして答えてくれるような。まだ夢の段階ですが、実運用でデータが溜まっていくほど、これが現実味を帯びてくる気がしていて、そこが一番楽しみです。
まとめ
3週間、実運用に乗せてみての振り返りです。
- 価値が出るのは「作った後」。 何もしなくても議事録が自動で溜まり、Wikiに反映され続ける、この放置していい感じが効く。
- Web UIを足して、MCP(Claudeから引く)+ブラウザ(眺める)の両輪になった。 認証はIAPで固く、自分だけがアクセスできる。
- コストは見込みより少し上振れ。 デイリー ¥300〜500(会議ゼロの日は¥0)+初回の一括生成に¥4,000ほど。日々の実感としては許容範囲。
- 名寄せ・話者特定はまだ宿題。 いまは
aliases.yaml手編集。Web UIから直せるようにするのが次の一手(※未実装)。 - 展望は「自分をトレースしたAI」。 溜まった文脈を土台に、自分の思考を再現するところまで持っていきたい。
作って終わりではなく、運用して育てていくフェーズに入りました。同じように「自作のナレッジベースを、どう日常運用に乗せるか」で悩んでいる方の、何かのヒントになれば幸いです。改善が進んだら、またこの続きを書きます。それではまた!
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